相談者は業務用機械の設計、施工に携わっていたこともあり、早朝・深夜の工事や出張が珍しくなく、必然的に超過勤務となることが多い勤務状況でした。しかし、相談者の超過勤務手当は、相談者が申請した超過勤務時間を、上司によって減らされたうえで支払われていました。
相談者は業務用機械の設計、施工に携わっていたこともあり、早朝・深夜の工事や出張が珍しくなく、必然的に超過勤務となることが多い勤務状況でした。しかし、相談者の超過勤務手当は、相談者が申請した超過勤務時間を、上司によって減らされたうえで支払われていました。
相談者が退職後、社内調査の結果「192円」の未払い残業代があったとする旨の通知が元勤務先から届きました。その通知を見た相談者は、「このまま振り込み先の口座を連絡すれば、未払い残業代が192円だったと認めることになる」と考えました。そのうえで、実際に受け取ることができたはずの未払い残業代について回答すれば、きちんと支払いを受けることができるのではないかと考え、当事務所に相談にお越しになりました。
残業申請書類に事実とは異なる部分があっても、残業代を請求できる場合がありますので、諦める必要はありません。
今回のケースでは、はじめに相談者からの情報をもとに未払い残業代を計算し、元勤務先に対して内容証明郵便にて請求を行いました。すると、元勤務先は代理人として弁護士をつけてきました。代理人弁護士から提供された資料をもとに相談者と打ち合わせを行い、さらに追加資料を請求するなどして、本来支払われるべき残業代をできるだけ正確に計算していきました。
今回のケースの大きな問題は、上司による意図的な残業時間の操作ですが、そのほかにも次のような問題点がありました。まず、元勤務先の給与規程では、割増賃金支給時間の算定に当たっては、毎日の労働時間において0.5時間未満の「端数を切り捨てる」という決まりがありました。しかし、このような取扱いは「賃金全額払いの原則」に違反するので、その旨を主張しました。
また、就業規則には、出張や事業場外で勤務を行った場合には、「所定労働時間での勤務」とみなすとの定めがありました。しかし、相談者は出張や事業場外勤務の際には携帯電話を持ち歩いており、いつでも連絡を取れる状態にあったこと、そして、「超過勤務整理報告表」にて超過勤務時間について報告していたことから、「事業場外のみなし労働時間制の適用」がないことを主張しました。
残業代の計算をした結果、約20か月で、240万円の残業代未払いが発生していることが分かりました。それをもとに相手方と交渉を重ねたところ、相手方代理人弁護士より、240万円での支払いの提示があり、受任から6か月で示談での解決となりました。
※2020年4月以降は時効期間が3年になりました。
残業代が請求できるかどうかのポイントについて詳しく解説しています。